2019年6月の選歌
「父さんは」と目を閉ぢしまま母は聞く既に逝きたる父の所在を
筒井みさ子
レストランで声かけられて懐かしき顔に出会えど名は浮かび来ず
岡まなみ
道端の石に名を付け幼児(おさなご)は散歩のたびに挨拶をする
鵜川登旨
いとおしき孫の名前が出て来ない「あのう、あのー」と小遣い差し出す
柴田和子
名も知らぬ山野草(さんやそう)に癒されて気の向くままに畦道(あぜみち)を行く
山下ふみ子
丸まりて手毬のような紫陽花に名もしらぬ虫隠れてのどか
佐々木 直
毎日を家にこもりて怠惰なる我を叱るか空の青さが
清塚洋子
(山の上の宿にて)
窓を開け冷気入れれば乳色の雲海の下に街は沈みおり
森田郁代
カーテンに夕陽の名残の映りきて淡き色へと染め上げてゆく
楽満眞美
温かき雨の潤(うるお)す夜気に触れゆくりなく知る夏の訪れ
楽満眞美
「父さんは」と目を閉ぢしまま母は聞く既に逝きたる父の所在を
筒井みさ子
レストランで声かけられて懐かしき顔に出会えど名は浮かび来ず
岡まなみ
道端の石に名を付け幼児(おさなご)は散歩のたびに挨拶をする
鵜川登旨
いとおしき孫の名前が出て来ない「あのう、あのー」と小遣い差し出す
柴田和子
名も知らぬ山野草(さんやそう)に癒されて気の向くままに畦道(あぜみち)を行く
山下ふみ子
丸まりて手毬のような紫陽花に名もしらぬ虫隠れてのどか
佐々木 直
毎日を家にこもりて怠惰なる我を叱るか空の青さが
清塚洋子
(山の上の宿にて)
窓を開け冷気入れれば乳色の雲海の下に街は沈みおり
森田郁代
カーテンに夕陽の名残の映りきて淡き色へと染め上げてゆく
楽満眞美
温かき雨の潤(うるお)す夜気に触れゆくりなく知る夏の訪れ
楽満眞美